社交ダンススタンダード種目の一つ、タンゴ。

『タンゴ』とは何だろう?

タンゴで表現するべきものとは…?
他のスタンダード種目と男女の組み方や踊りが少し違う

今回は『タンゴ』。
成立の歴史から、表現するべきキャラクター性まで、
『タンゴとは何か?』という質問を徹底解説していきます!

おそらく今まで知らなかったことも、
えっこれ本当に言ってる…?というような知識もあるのではないかと思います…!

経験者さん向けに書いているので、タンゴについて深い理解がしたい!と思ったときに是非ご活用ください!👇

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社交ダンス講師
『ダンサー』というのは、ただステップを知っていて踊れるというだけでは当たり前ですが努力不足です。
『どんなダンスを』『何を表現したいのか』を理解するために、最低限の知識は身につけておきましょう。

1:【基礎】社交ダンスのタンゴの知識

まずはタンゴがどのような種目なのか見てみましょう!

激しく情熱的な種目ですね。
少しラテン種目っぽい…?と感じる人もいるかもしれません。

①タンゴの特徴

・タンゴは非常にEmotional【感情的な】ダンスであり、それが観客に伝わなければならない

・他のスタンダード種目とはムーブメント、フットワークにおいて絶対に把握しなければならない『違い』がある

・In Tango, feelings of joy, sorrow, anger, and all sorts of multiple complex feelings that are not so easy to name are expressed in a person’s face and body and communicated to others through their own bodily responses.

【タンゴでは、あらゆる複雑な感情が、表情・体で表現し、また自分の身体の反応を通じて観客に伝えられる。】

タンゴの特徴を学ぶ上で、絶対に把握しなければならないのは

他のスタンダード種目との様々な違い
そして、タンゴの真のキャラクター性の理解です

ここでは、この2点に絞って、徹底的に解説していくわけですが…

タンゴは成立して広まった過程で様々な文化を吸収して、いろんな場所で楽しまれてきました。
だからこそ文化的要素が非常に強く、『タンゴ』と呼ばれるダンスだけでも様々な種類があるために、
ここで紹介できる情報はほんの少しだけ。

2009年にタンゴはユネスコ無形文化遺産に追加され、その『文化』の強さが世界的に認められています。

ここで主に紹介するのはBallroom Tango【社交ダンスのタンゴ】の情報ですが、
他にも様々な種類のタンゴが楽しまれていることを頭において、読み進めてみてください!

タンゴ一覧↓こんなにあるんです!

  • Tango argentino
  • Tango canyengue
  • Tango Oriental Uruguayan tango
  • Tango liso
  • Tango salon
  • Tango orillero
  • Tango camacupense
  • Tango milonguero
  • Tango nuevo
  • Tango vals
  • Milonga
  • Ballroom Tango
  • Finnish tango

②タンゴと他のスタンダード種目との決定的な違い

タンゴの他の種目との大きな違いとして、基本姿勢の違いを挙げることができます。

MILAGROより引用
  • The Lady will feel more on the Man’s right side than in the other four dances.
    【他の4つのスタンダード種目よりも、女性は男性の右サイドをより感じている
  • There is a twist in the body in Tango not found in the other dances…and always slightly flex the knees.
    【タンゴには他の種目にはない体のひねりがあり、常にわずかに膝を曲げている

…これらは基本的なタンゴと他のスタンダード種目との姿勢の違いです。

ではなぜ、そもそもこのようなキャラクター性を持っているのでしょうか。
実はそれにはタンゴの成立のおもしろい伝説が由来していると言われています…

ここではその物語をご紹介します。


タンゴが生まれたのは、19世紀初頭、アルゼンチンのブエノスアイレスです。

タンゴは、ブエノスアイレスの低層階級でガウチョと呼ばれる人々が生み出したものでした。
ガウチョというのはある言語で「孤児」「放浪者」を指す言葉。
要するに、貧しい人々です。

彼らは南米のカウボーイとも言われており、主に牧畜業を生活の糧にしていました。
そして毎日のように馬に乗っていました
「ガウチョたちは馬の体の汗を固めたものを着ている」という記述があるほどです。

また、馬に乗る時間が多かったために膝が常に曲がっていたと言われています。

ガウチョたちはシャワーを浴びれずじまいのまま、夜のナイトクラブに行っては
女の子にダンスを申し込みます。

女性はダンスには応じたものの、単純に彼らが非常に臭かったので
男性の右腕の中でのけぞるようにしてダンスをしたと言われています。
そしてガウチョが本当にダンスの支払いをするお金があるかどうかを確かめるために、
彼女たちの右手はガウチョのお尻ポケットあたりに常にあったのだそう。笑

そして、実はこの姿勢がBallroom Danceで踊られているタンゴの基本姿勢の元になっていると言われています。

最初にご紹介したタンゴの特徴である、
The Lady will feel more on the Man’s right side than in the other four dances.
【他の4つのスタンダード種目よりも、女性は男性の右サイドをより感じている

There is a twist in the body in Tango not found in the other dances…and always slightly flex the knees.
【タンゴには他の種目にはない体のひねりがあり、常にわずかに膝を曲げている

…この2つの特徴は、
ガウチョたちのダンスの伝説が本当に元になっているのかもしれません。。。

また、この2つ目の特徴でも言われている『体のひねり』については後ほど詳しく解説していきます。

どのような経緯であれ、タンゴならではの特徴、他のスタンダード種目との違いは踊る上で大事になっていきます。
しっかり覚えていきましょう!

③タンゴで表現される感情【Emotional】とは

タンゴは非常にEmotional【感情的な】ダンスである

…と最初の方にご紹介しましたが、そのエモーショナルさの本質とは何でしょうか。

今回は最もオリジナル、タンゴの本質に近いと言われている
Tango Argentino【アルゼンチンタンゴ】について少しご紹介していきながら、
タンゴで表現するべき『Emotional』について学びましょう。

そもそも『タンゴ』は先程も紹介したようにアルゼンチン発祥の踊りです。
簡単に言えば、Ballroom Tango【社交ダンスのタンゴ】はTango Argentino【アルゼンチンタンゴ】が簡素化されているものだとされています。

Ballroom Tangoにはタンゴが世界中に広まっていった過程の歴史が含まれているために、
ヨーロッパやアメリカの文化、そしてCompetitive Dance【競技ダンス】の要素を取り入れて、Ballroom Tangoは発達しました。

だからこそ、アルゼンチンタンゴがよりオリジナルに近い、とされているのです。
まずはどのような踊りかを見てみましょう。

少しこのダンスのEmotionalさを感じていただけたでしょうか…?

例えば物理的な違いではこのようなことなどが挙げられます。

  • コネクション(男性と女性の体のくっついている場所)
    • 腰部分→Ballroom Tango
    • 胸→Tango Argentino
  • ホールドの違い(どのように腕を組んでいるか)

…など。もちろんこれだけではありません。

Ballroom Tangoにはあまり見られない、アルゼンチンタンゴの魅力は『即興性』です。

Argentine tango dancing relies heavily on improvisation.
【アルゼンチンタンゴは即興性に大きく依存している。】

教えるために作っている教師ももちろんいますが、基本的にアルゼンチンタンゴにはベーシックステップというものがないとされています。

つまり、ダンスとして最も大事なのは『テクニック』というわけではないのです。

タンゴの本質・Emotionalな部分についてこのように書かれています。

これを簡単に訳すと、詩人でさえ表現する難しい信念や考えを直接的に表現しているものがタンゴであるという風になります。

つまりタンゴのEmotionalさとは、喜びや悲しみ、怒り、名前をつけることのできない複雑な感情を人の顔や体で表現し観客に伝えられるものです。

動画で見てもわかるように、アルゼンチンタンゴでは男女の中で行われる感情のやり取りがより伝わりやすいですね。

Ballroom Tangoでも、同じようにEmotionalな部分が非常に大事になってくるのです。
テクニックばかり優先して練習してしまいがちではありますが…


もちろん、現在踊られているタンゴの種類は他にもたくさんあります。

初心者さんも経験者さんも知っておいてほしいことは、
アルゼンチン発祥のタンゴは、世界中に様々な文化を取り入れて発展していった種目であるために、様々な『タンゴ』が生まれたということです。

文化的要素、成立した過程、特徴こそ違いがあるものの、『タンゴ』が様々な形で踊られているという事実は

『タンゴ』の魅力が世界中で愛されていることを指していると言えるのではないでしょうか。

2:【応用】社交ダンスのタンゴの知識

ここからはダンスのアビリティに直接影響する知識をご紹介していきます!

①タンゴで気をつけるべきホールド

タンゴの基本ポジションは他のスタンダード種目とは少し違います。
これは先程、タンゴの成立の歴史でも解説したとおりです。

【タンゴには他のスタンダード種目にはないボディのツイストが存在している。】

上の英文のように他のスタンダード種目との違いで『twist』ツイスト、つまり体のひねりを挙げられます。

そしてこの『ひねり』によって他の種目とはホールドも変わってくるのです。

男性の右腕

The Man’s right arm will wrap around the Lady’s back further and with a sharper slope downward from the elbow to the fingers. The fingertips should reach around the Lady’s back, until they are just past the Lady’s spine.

他の種目よりも男性の右腕は女性を包み込んでいる。右腕の肘から指に向かって下向きの急な傾斜になる。指先は、女性の背骨をちょうど通り過ぎるくらいまで達する

女性の左手

The Lady’s left hand will not be placed on the Man’s right shoulder, as it is in the other four dances. Rather, her hand will hook around the Man’s upper arm, so that the back of her hand is pressing up from underneath his upper arm, just near his underarm.

他の種目と違って、女性の左手は男性の右肩に置かれない。むしろ男性の腕に引っかかるように、女性の手の甲が男性の上腕のすぐ下に置かれ、女性の手によって押し上げられる

男性の左腕

Whereas in the other dances, the Man’s left arm will seem to hang gently from his hand down to his shoulder, in Tango, the Man’s left forearm should be almost parallel to the floor from the elbow to the wrist, with a sharp angle at the elbow.

他の種目では、男性の左腕が手から肩にそっと垂れ下がっているように見えるが、タンゴでは、男性の左前腕は肘から手首にかけて床とほぼ平行になり、肘は鋭角になる。

…文字で言われてもよくわからなくなってしまうと思うので、
ここでもう一度世界的ダンサーのタンゴのホールドを見てみましょう。

②タンゴで気をつけるべきムーブメント

経験者さんは特に注意しておきたい知識です。

他のスタンダード種目では、体重が足から足へと自由にスイングし、明確な体重移動をすることによってSwingとSwayのテクニックが働きます。

ですがタンゴでは、

つまり、タンゴでは全てのステップを踏む足の間で体重が維持されるため、ムーブメントそのものからはSwingは生み出されない
またムーブメントをコントロールするためのSwingは必要ではない
…とされているのです。

それは、タンゴがまるで平行運動をしているように見える原因だと言えるでしょう。

その代わり、しっかり体のツイスト・ひねりがわかることが重要です。
ムーブメントそのものの平行運動と体のひねりがコントラストとなって、
ダイナミックさを生み出すと言えるのです。

ここでもう一度少し前にあげた世界的ダンサーのタンゴを見てみましょう。
少しでも、こういうことか!と思っていただけると幸いです。

③タンゴで気をつけるべきフットワーク

上に述べた平行運動のムーブメントを生み出すために、足の動き、つまり
『フットワーク』が非常に大事だということができます。

他のスタンダード種目では、ムーブメントによってSwingやSwayを生み出さなければならないので、フットワークもそのために
ヒール【踵】からトゥ【つま先】、もしくはトゥ【つま先】からヒール【踵】という風に動かします。

→この部分はヒールからフラット【ベタ足】、もしくはフラット【ベタ足】からヒールとしている考えもあります。
ダンサーによって意見が分かれる部分なので一つの知識として知っておくと良いでしょう。

一方タンゴでは、

ヒール【踵】→フラット【ベタ足】
もしくはボール→ヒール【踵】

という風にされています。
→このように説明されない場合もありますが、一つの情報として頭の片隅に入れておきましょう!

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社交ダンス講師
文章にすると難しいので、少し簡単な日本語で説明します。

【前進】足の裏を床に置くように
【後退】つま先を床から離しすぎないように


知識としてまずはこれを心がけることから初めて、レッスンなどでしっかりと習得しておきましょう。

特に後退するとき(特に女性!)はフットワークが難しいので、練習が必要です!

まとめ

Ballroom TangoではCompetitive Dance【競技ダンス】として楽しむために、
テクニック・ステップなど様々な観点においてある程度定義され踊られています。

もちろんダンサーとして、踊るためにはそのような知識は非常に重要です。
この記事では【応用】タンゴの知識の部分でまとめた部分になります。

ですが、タンゴとは『表現されるもの』があってこそ、
私達が真に楽しむことが出来るのではないかと思います。

他の種目でももちろんそうですが、

それぞれ成立した歴史やキャラクター性を学ぶことで、
『じゃあこのダンスは結局何のための踊りなの?』という大事な質問の答えを探してみる。
それは、表現をするダンサーとしての大事な仕事ではないでしょうか。

この記事で新たなタンゴの魅力に少しでも気づくことが出来たら幸いです。

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