今回は社交ダンススタンダード種目の一つ、クイックステップというスタンダード種目を徹底解説していきます。
『クイックステップ』とはなんだろう…?
クイックステップを踊るのは苦手…
なんとなくノリノリなスタンダード種目というイメージだけで詳しいことは何も知らない。
そんな方のために、『クイックステップ』Quickstepsとは?という疑問を解決する情報を一つにまとめてみました…!
おそらく知らなかったことがたくさんあるのではないかと思います。
初心者さんも経験者さんも、まずはご一読ください…!

『どんなダンスを』『何を表現したいのか』をわかるために、最低限の知識は身につけておきましょう。
目次
1:【基礎】社交ダンスのクイックステップの知識
思わずノリノリになってしまうような、見ているだけで楽しいスタンダード種目ですよね…!
それでは、そんなクイックステップについて知識を付けていきましょう!
①クイックステップの特徴
クイックステップの特徴をまずは簡単にまとめます。

・スタンダード種目の中で最も軽快で明るいダンス
・The challenge is to make the dance elegant like the Foxtrot, while, at the same time, being very light and sprightly, as it progresses rapidly about the dance floor.
ダンサーとしての課題は、スローのようにエレガントなダンスを踊らなければならないと同時に、速いムーブメントが軽くなければならない
このダンサーとしての課題について、えっ…?と思う方は多いのではないでしょうか。
なぜThe challenge is to make the dance elegant like Foxtrot.【ダンサーとしての課題は、スローのようにエレガントなダンスを踊ること】
なのでしょうか。
実はクイックステップという種目とスローフォックストロットという種目は起源が同じであると言われています。
これについては、あとでクイックステップの歴史について詳しくご紹介していきますが、
『起源が同じ』であるがために、素早く明るいアグレッシブなダンスの中で見えるエレガントさが求められる種目なのです。
足のムーブメントはほとんど地面に触れていないように見える一方で、
上半身は、強くしっかりしていて、滑らか。エレガントさが際立つ。
ダンサーに求められる『クイックステップのテクニック』の真髄とは、
このコントラストであると言えるでしょう。

②クイックステップの成立の歴史【アメリカ】
クイックステップのキャラクター性の理解への最短の近道は、その歴史を理解すること。
ここでは、クイックステップの成立のアメリカの歴史をご紹介していきます。
時は1840年代のアメリカ。
この時代、南北戦争が勃発しており、国内の情勢は『戦争』によって大きく左右されていました。

突然ですが、皆さんは『戦争』と『文化』と聞くとどのようなイメージが湧くでしょうか。
センセーショナルを巻き起こすような『文化』が戦争によって縮小されたり抑圧されたり、被害を受けるようなイメージが湧きやすいのではないかと思います。
ですが、『戦争』がきっかけで、その後も受け継がれる『文化』が生まれる。というのは珍しくはない話なのです。
そしてクイックステップも、そのような文化の一つ。
クイックステップは元々、その時代に人気になったMarch【行進】として生まれました。
大統領、軍、英雄、エキシビジョンなどを祝い、全員の『士気』を高めるためのダンスだったのです。

こうして生まれたクイックステップが発展していった過程もまた、『戦争』に影響されています。
時は移り、1920年代。アメリカは『第一次世界大戦』の真っ最中です。 ニューヨーク郊外でカリブ海の人々(Caribbean)やアフリカンダンサーによって、クイックステップは踊られていました。

この頃、下に挙げたダンスを取り入れ、クイックステップは進化を遂げていきます。
スローフォックストロット【foxtrot】←ほとんど同じ時代に生み出されたために同じ起源を持っています。
チャールストン【Charleston】
シャグ【Shag】
ピーボディ【peabody】
ワンステップ【one-step】
これらのダンス↑は全てカップルダンス、つまりその当時のBallroom Dance。
こんなにたくさんのダンスが…と感じるかもしれませんが、 戦時中だからこそ、人々は娯楽や文化を求めていたのかもしれませんね…
ここでクイックステップは初めて
Foxtrot【スローフォックストロット】とひとまず正式に同じダンスになったわけですが
ほとんどのバンドがスローフォックストロットをかなり速い速度で演奏することが多くなったために
次第に2つのダンスに別れていったと言われています。
つまり基本的なダンスの概念としては、スローとクイックは同じ要素を多く持っています。
同じ時代に生まれ、結局は文化の流行りで『遅い方』『速い方』というように別れていったのです。
また是非注目してほしいのは、『戦争』と大きく関わっているということ。
人々の士気を高めるためのダンスだった、と説明しましたが
この文化の流れはダンスに限ったことではもちろんありません。
『文化』とは人々が生み出すもの。
そしてその当時求められていた『明るさ』や『陽気』を文化が人々に与えていたのです。
この時代の音楽もダンスも振り返ってみてみれば、進んでいる方向性が同じです。
クイックステップは『明るい』『楽しい』。
表現をするダンサーとして、それだけのイメージでは足りないのです。
③クイックステップ成立の歴史【イギリス】
アメリカでどのようにしてクイックステップが成立したかはおわかりいただけたでしょうか。
ここからは、そのクイックステップがどのようにイギリスで流行ったかをお話します。
1920年代のイギリスもまた戦時中。

その当時のイギリスではチャールストン【Charleston】と呼ばれるダンスが非常に流行っていました。
アメリカの歴史の中で、クイックステップに取り入れられたBallroom Danceの一つとして出てきたダンスでしたね。
このチャールストンというダンス、本当にかわいいので是非見てほしい…。
現代でもブロードウェイやミュージカル、テーマパークでも踊られているようなダンスですね!
当時のイギリスでは、このチャールストンからクイックステップが発展したと言われています。
チャールストンには特徴的なキックがあるのですが
このキックなしのプログレッシブダンスとしてクイックステップが定着しました。
その後すぐ、社交ダンスの競技会でも標準化されるようになり、人気を博したと言われています。
なぜこれほどクイックステップがイギリスで人気になったかのには、面白い説があります。
the Quickstep was Britain’s answer to keeping warm indoors during the winter.
【クイックステップは寒い冬でも室内で暖かくすることのできるイギリス人の解決方法だった。】
ある記録では、
It is a proven fact that the energy exerted while dancing a 60 second Quickstep is equivalent to running a mile in record time!
【60秒のクイックステップを踊っているときに出るエネルギーは、記録的な速さで1マイル・1.5キロ走ることに相当する量と同じ!】
なんてことも書かれていたりします…笑
戦時中で資源も限られ、むやみに外に出れない時期だったからこそ、
インドアで出来てまた暖かくなれるダンスとして、人々の流行になったのかもしれません…。
2:【応用】社交ダンスのクイックステップの知識
ここからは実際にダンスのアビリティに影響する知識をご紹介していきます!
①クイックステップの音楽
クイックステップで踊られるリズム・音楽は、まさにクイックステップが歩んだ歴史と同じ影響を受けています…
ジャズです。

少しだけジャズとクイックステップの関係性をお話します。
クイックステップはニューヨーク郊外で様々な人種の人々に踊られた歴史があると先程述べました。
そしてジャズもまた、ニューオリンズという街で多種多様な人種の人によって楽しまれていたという歴史があります。
メキシコ系・アフリカ系の人々は当時良い生活ができていたわけではなく低所得者層でした。
だからこそ、第一次世界大戦の開戦と同時に仕事を求めて北上したのです。
それがジャズなどがアメリカで広く伝わった一つの原因であると言われています。
クイックステップもまた、そのようにして同じ時代にアメリカに広く伝わったわけです。
クイックステップで使われる音楽は基本的に4拍子。
数え方は『スロー・クイック・クイック』です。

スローで二拍、クイックで一拍です。
ジャズの音楽は基本的に4拍子。
一般的な4拍子はカウントの1と3で奇数拍が強いのに対して、
ジャズの拍子はカウントの2と4で偶数拍が強くなります。
ダンスでMusicality音楽性についても審査項目に入りますが、
実際にオリジナルの音楽がどのような音楽なのかを知っておくのもまた、理解向上に繋がるのではないでしょうか。
また、スローの部分ではほとんどヒールを使い、クイックの部分ではほとんどボールを使います。

また上級者向けのカウントの数え方をここで紹介します。
『quick-and-quick-and-quick, quick, slow』
音符でいうと8分音符のようなイメージです。
なんだそれ…と思うかもしれませんが、このようなカウントのとり方の意識で踊ろうとすることが大事です。
②クイックステップのステップ
クイックステップの基本的なムーブメントです!
- Rise and Fall【ライズとフォール】
- Lock Step【ロックステップ】
- Natural Hairpin【ナチュラルヘアピン】
- Running Finish【ランニングフィニッシュ】
- Outside Change【アウトサイドチェンジ】
- Chasse’【シャッセ】
- Hover Corte’【ホバーコルテ】
- V-6 Combination【V-6 コンビネーション】
これらの基本的なステップを習得したら、ターンとランを追加してバリエーションを増やしていきましょう。
③クイックステップ上達方法

『一列に並んでいる』というのは、
リーダーはパートナーの足と同じ軌道上にあるという意味です。
やってしまいがちなのが、『避けよう』としてしまうこと。
速くて焦るとパートナーの周りや外に足を踏み出そうとしてしまいがちです。
具体的な例で言えば、特にコーナーを曲がるとき。
動きがスムーズに行くように、サイドに対するターンの角度を少しずつ一緒に変えていきます。
Please make sure that all forward and backward steps are “in line,” meaning that they are on the same track as your partner’s feet.
つまり、同じ軌道上で足のステップを踏めるようになるためには
パートナーとの呼吸が大事になってくるのです。

まとめ
クイックステップは軽快で楽しそうで、明るくてノリノリな種目ですが
その『ノリノリ』には歴史的な理由がありました。
戦時中に生まれた文化であるからこそ、
人々の『明るくいたい』という気持ちがクイックステップを生み出したのです。
そしてそれはクイックステップの要である『ジャズ音楽』も同じこと。
クイックステップをますます好きになれる理由の一つになれたら、幸いです。
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