今回は、社交ダンスラテン種目の1種目でもある、パソドブレを徹底解説していきます!
競技ダンスの中でも、最も印象に残りやすい『パソドブレ』。
『パソドブレ』とはなんだろう…?
スペインの踊り…?
闘牛士の踊り…?
と何となくの知識はあるものの、結局どういうものなのか正しく知る機会は少ないもの…
この記事で、パソドブレを踊る上で『絶対に知っていなければならない』知識だけを集めたと断言をすることができます。
初心者さんも経験者さんも必ずご一読ください。
それでは見ていきましょう!
目次
1:【基礎】社交ダンスのパソドブレの知識
それではパソドブレを徹底的に学んでいきましょう…!
①パソドブレの特徴
まずはここで紹介する特徴を簡単にまとめます。

・競技ダンスCompetitive Danceのラテン種目の一つ
・唯一、社交ダンスの中で『役を演じている』ことが最大の特徴。
・演じるのは『Dance of a Death between man and a bull』
・男性は闘牛士・マタドールという役に対して、女性は非常に多くの役を演じ分けている
『闘牛』というイメージだけは最初に思いつきやすいのではないでしょうか。
実はそれだけでは、パソドブレを踊る上で情報不足です。
パソドブレは闘牛のシーンをダンスを通して演じていますが、
実は『闘牛のシーンを踊る』だけでは日本語としては物足りないところ。
パソドブレとは、
『Dance of a death between man and a bull』
つまり、闘牛士と牛の間で起こる『死』の舞踊。
ダンサーとして、この『死』のダンスを『演じる』という部分が非常に重要なのです。

・エモーショナルな部分、そしてキャラクター性がダンステクニックより大事だとされている
・男性が主役
・ダンスを通して『役を演じる』
…という特徴があります。
『演じる』ことにフォーカスしている種目はパソドブレだけ。
他の種目とは違って『男性が主役』だという特徴も、しっかりと意識しなければなりません。

社交ダンスで演じられる『闘牛』はスペインの文化。
もちろん他のヨーロッパ諸国でも『闘牛』という文化は存在していたものの、
社交ダンスで演じられるのは、その中でも最も激しいとされるスペインの『闘牛』になっています。
つまり『パソドブレ』を踊る上で非常に重要なのが、スペインの闘牛文化そのものに対する深い理解があることです。
まずは、スペインの闘牛文化を少しだけ感じてみましょう。
闘牛場・アリーナには闘牛士と牛の姿だけ。
アリーナの全観客が見つめているのは、着飾った、自信を持った闘牛士ただ一人。
いざ闘牛が始まれば、牛と立ち向かうアグレッシブな激闘だけが見世物になるのではありません。
闘牛士の全ての状況を把握している賢さ、落ち着き、そして彼の用意周到な動き。
つまり、それだけの冷静さを生み出す『闘牛士のSelf-Confidence(自信)』を観客は見ているのです。
そして、牛をただかわすだけでは闘牛・Bullfightではありません。
闘牛士は決まったスタイル、Body Position、ムーブメントを使って、牛をかわさなければならないのです。
観客が見ているのは、この一連の『死』に直面した闘牛士の自信・立ち振舞であると言えます。
つまり、アグレッシブな一連のプロセスの中での闘牛士の心の落ち着きや静けさに対して、観客は興奮を覚えている。
それがスペインの『闘牛』という文化です。

…つまり、どうしてもお伝えしたいのが
パソドブレは、シンプルな『牛と闘牛士のやり合い』
というものではないのです。
それでは『闘牛』そのものの概念や文化を何も表現できていないことになります。
闘牛士と牛との間の激しいファイティングの中での、いわゆる闘牛士の心の静けさ。
その対象的なコントラストこそが、人々の感動や興奮を生み出すのです。
そして、その文化を表現できてこそ、パソドブレという『死のダンス』が成立するのです。
②パソドブレの男性の演じる『役』
男性の演じる役は、もちろん『闘牛士』です。
上に書いた『闘牛』そのものの文化を知れば、ダンサーとしての『闘牛士』が何を求められているのか察しが付くのではないでしょうか。
パートナーとのダンスの空間を支配できているかどうか。
そして支配できるだけの落ち着きや冷静さ・自信がダンスを通じて伝わること。
ダンスそのもののテクニックではなく、キャラクター性が評価される『パソドブレ』だからこそ
男性は自分が主役であるという自覚を持って踊らなければならないのです。
③パソドブレの女性の演じる『役』
女性ダンサーは一般的には闘牛士の持つケープの役であるとされていますが、
実はそれだけではないのです…!
- Torero【トレロ】正闘牛士。いわば花形。最後に牛にとどめを指す役割
- Picado【ピカドール】馬上から槍を付き、牛を弱らせる役目。その具合で闘牛の成否が決まると言われている
- Banderillero【バンデリリェーロ】闘牛士の助手の見せ場
- Bull【牛】
- Spanish Dancer【スペインの踊り子】
こんなにたくさんの役割を、一つの踊りの中で役割を演じ分けているのです。
(ただし、もちろんこのキャラクター性の使い分けの解釈にはいろんな考え方があります。)
この記事の後半で解説していきますが、
パソドブレには『第一ハイライト』『第二ハイライト』『第三ハイライト』という曲の区切れがあります。
女性の役は、このハイライトによって変化するという解釈をすることが一般的です。
ここではSpanish Dancerとしての女性の役について、少しだけ詳しく話します。
実は『闘牛士』にとってSpanish Dancer(踊り子)の存在は非常に大きい。
踊り子は非常に強い女性。そして非常に賢い女性であるとされています。
だからこそ、下の2つのことができるのです。
- パソドブレというダンスが『男性が主役』であるという事実を心の底から理解し、それを感じ、そしてリスペクトをしている。いわば『闘牛士』の一番のファンのような立ち位置。
- 女性なくして、『男性が主役のダンス』が存在し得ないということを理解している。

これが、パソドブレにおける『女性の役割』(Spanish Dancer)の真髄です。
『闘牛士』の良き理解者であり引き立て役のようなイメージです。
つまり。
『男性が主役』である事実のために女性がいるのではなく
女性の存在こそが、『男性が主役のダンス』を生み出している根本的な原因である。
というわけなのです…。
③パソドブレ成立の歴史
ここではパソドブレの成立の歴史を解説していきます。
ですが、かなりたくさんの説があるのでここではその一部を…。
まず、ダンスとしての『パソドブレ』は1920年に南フランスで起こりました。
その後人気が出て、1945年にラテンアメリカンダンスとして社交ダンスの仲間入りをすることになります。
歴史としてはかなり新しいダンスなのですね…!
実はパソドブレは3つの国の文化の影響を受けていると言われています。
スペイン、フランス、英国 の3つの国々です。

社交ダンスの仲間入りをした際は、非常に英国の影響を受けたものだったと言われています。
パソドブレの名前の起源になったものについていろんな説があります。
パソドブレは『闘牛』の踊りであると聞くことは多いですよね。
闘牛のことをスペイン語では『Corrida』、英語では『Bullfight』と呼ばれています。
どちらも、『パソドブレ』(Pasodoble)にはなんだか似ていないですよね…

実はフランス歩兵の行進の1形態である、フランスの “pas-redouble”に由来すると言われています。
そしてパソドブレのステップにもフランス語に由来するものがあります。
(また実際にMarching Step【行進】がベースのステップで、パソドブレは成り立っています。)
闘牛そのものはスペインの文化。
つまり、パソドブレはその当時のフランス、スペインなどの異国の文化が合わさっているものなのです。
2:【応用】社交ダンスのパソドブレの知識
『パソドブレ』がどのようなダンスなのか、だんだんと理解が深まってきたでしょうか。
ここからは、ダンスのアビリティに直接活かせる知識をご紹介していきます!
①パソドブレの音楽について
これが代表的なパソドブレで使われる音楽です。
これこそパソドブレ!という音楽ですよね…
パソドブレの音楽には、
- Exact Phrasing(特定のフレージング・句切れ法)
- Exact numbers of beats in each part(特定のビート・拍)
があります。
そして、一つの音楽に対して
『第一ハイライト』『第二ハイライト』『第三ハイライト』までがあり、
3つの構成で物語が成立します。
第1ハイライトまで―闘牛士の入場・物語の始まり 第2ハイライトまで―闘い〜闘牛士の勝利までのシーン 第3ハイライトまで―勝利の祝い
つまり、このストーリーラインをそもそも理解していなければ、 『パソドブレ』を踊ることはできないのです…!
ハイライトというのは、音楽が最も強調されるところ。 ダンサーはこのハイライトに合わせて劇的なポーズを取ることで、ハイライトを強調・表現します。
この代表的なパソドブレの曲は、España Cañiと呼ばれる曲。
ハイライト部分が定められているために、他の曲が使われることはあまり多くはありません。
そして、曲のパターンが決まっているので、競技ダンスのみで楽しまれています。
また、パソドブレの音楽は歴史的にフラメンコの影響を大きく受けていると言われています。
リズム自体は非常にシンプル。
1と2のマーチリズムを持ち、変化はほとんどありません。
そしてこの行進のリズムは、『パソドブレの歴史』でも確認したように、 フランスの文化を受けているものだと言われています。(諸説あります)
②パソドブレのステップ
パソドブレのステップは、『身体を離して踊るスタンダード』と例えられることがあります。
クローズドホールドが多く、フットワークも『ヒールから』というルールがあるためです。
パソドブレの基本的なムーブメントにはこのようなものがあります。
- Sur Place (on the spot)【その場にとどまる】
- Separation【セパレーション】
- Attack【攻撃】
- Huit【ユイット】
- Open Promenade to Open Counter【オープンプロムナードからオープンカウンター】
- Promenade【プロムナード】
- Spanish Line【スパニッシュライン】
- Promenade Close【プロムナードクローズ】
- Flamenco Taps【フラメンコタップス】
まずはこれらのステップを学んでおくと良いでしょう。
③パソドブレ上達手順

ですが本気の上達を目指すなら、基本的なことから順にできるようにしていきましょう。
特に男性!
前後にウォークができるようにしましょう。
いきなりここからやらないようにしましょう。
Posture【姿勢】
Posture姿勢は、『パソドブレに対する真の理解』があって初めてできるものだと言っても大袈裟ではありません。
なぜなら姿勢には、闘牛Bullfightのオリジナルの文化がそのまま反映されてしまうからです。
上にも書いたように、男性は決まったスタイルやポジションで『牛を避けなければならない』、そしてその様が冷静で落ち着いている様子が闘牛において大事だとお話しました。
つまり、Posture姿勢はその根本的なダンサーとしての理解が最も現れる部分になるということです。
また多くの人が『ただ胸を張って反ればいい』という風に姿勢を取っていますが、それは間違いです。その理由をお話します。
闘牛において最もダメだとされているのが、Overconfident。
つまり、『自信の持ちすぎ』『根拠のない自信』と訳すことが出来ます。
→つまり『闘牛』という死に直面した競技では、right amount of confident『正確な自信の大きさ』が必要ですよね。
それがダンスを通して見てわかるようにしましょう。

Walk【ウォーク】
『ヒール』踵から足を出していいんだ!と思うと、思いっきり踵からウォークをしてしまいがちなことに注意しましょう。
あくまで足が動き出す瞬間はToeつま先から。
まとめ
いかがでしょうか…?
歴史的な背景が強く、様々な文化が現れているパソドブレ。
この『文化』としての理解なしに、パソドブレは踊れないと言っても過言ではありません。
男性が主役…とだけ聞くとパソドブレにおいて重要なのは男性だけなのではないか と思ってしまいがちですが、そうではありません。
女性の闘牛士に対する深い理解、男性のコントロールや冷静さ、
この二人の役割があってこそ
Full of Drama, Full of Love, Full of passionを生み出していくのです。
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